この透明な結晶の中で、彼女が眠っている。
そう思うと気持ちは逸り、焦り、募り、苦しくなり、また同時に愛しくなり、有難かった。
脈絡のない感情が彼女を思うだけで渦巻き、溢れ、時に決壊した。
そして結局、自分は報われるかもわからないこの道を進み続けるしかないのだと思い知らされた。
この十年、ただひたすらにがむしゃらだった。

勿論、決して彼女のためだけではなかった。
先の戦いが終わると同時に消えてしまった仲間、その仲間を追って消えた仲間、またそれらとは別に行方がわからなくなった仲間・・・。
彼ら全てに会いたくて、会いたくて堪らなかった。
とにかく寂しくて怖くて辛くて、得体の知れない何かに負けそうになったことすらあった。

それでも少しずつ少しずつ、目標に向かって調査をし研究をし勉強をし、展望が見えてきた。
似た志を持った仲間も集まってきて、ますます研究は発展していった。
またその過程で自分の双肩にかかってきた信頼やプレッシャー、憧れは決して不快ではなく、コクーンのために努力したいという純粋な気持ちを自然と燃やす結果に繋がった。

様々なファクターがホープを支えているのであり、それら全てが今の彼を形作っていると言って過言ではない。
しかしやはり、根強い要素としてそれが彼の中にあったのは、紛れもない事実であった。

(ヴァニラさん。そこは苦しくないですか?暑くないですか?今何を考えているんですか・・・)

ふと顔を上げ、彼女を見上げた。
普段コクーンにいることが多いホープではあるが、たまにグラン=パルスに降りるときはこうして、よくこうしたのだった。
ネオ=ボーダムの外れで、あるいはアルカキルティ大平原の真ん中で、何の気なしに空を見上げ、コクーンとこの大地を繋ぐクリスタルを見つめる。
それを支える二人の今は眠る女性を思う。
そのうちの一人の笑顔を鮮やかに思い出す。

(眠ったままでも、貴女はきっと輝いてるんだろうな。でも目を覚ませば、その身体を少しでもその意思で動かせば、もっともっと輝いてしまうことを知っているから)

いつでも元気をくれた。
励ましてくれた。
悩み傷ついた自分の背中を支え、時には逃げてもいいのだと言った。
優しかった。
彼女がいなかったら、もしかしたら生きていなかったかも知れない。
絶望に押し潰され、消え失せてしまったかも知れなかった。

その彼女もまた、苦しみを抱えていた。
悩んでいた。
悔やんでいた。
決してまっすぐには歩いていなかった。

そんな彼女の力になりたくて、自分なりに励ましたし、手を引いた。
細いけれど力強いのだと思っていた掌は、実はかわいそうに震えていた。
生まれて初めて、全身全霊で守りたいと思った人だった。
それを自覚したとき、もう彼女はいなかった。

そんな状態でやりきれない思いに打ちのめされ、日々はまるで落雷のようだった。
或いは命綱のない綱渡りをしているかのようだった。
若しくはその両方が同時に起きているようだった。
しかしホープはこれを甘んじて、否進んで受け入れた。
怖いけれど渡らなければならないのではなく、渡ることが当然であった。
むしろ、進んで渡りたかったのだ。

「ヴァニラさん」

唇に乗せ、遠い彼女を思う。
もう一度会いたい。
その一心で、ひたすらにがむしゃらだった。

何故それほどまでにに必死なのだと尋ねられたこともあった。
公共の利益を差し引いても、そのひたむきさには脱帽だと。
正直ついていけないと感じることもあると。
ホープもまた、自問自答したこともあった。
幼い少年の頃は、まだその感情の明確な名前がわからなかったのだ。

「会いたい、なぁ」

でも、今は。
逃れられないほどに自覚してしまったこの想いを、持て余して持て余して仕方がない。

たまにふと、つむじ風に頬をくすぐられるように思い出すことがある。
そして無性に、掻き抱きたくなる。
少年の頃には持ち合わせていなかった激しい感情に、自分でも笑ってしまう。
その位。

「コクーンとグラン=パルスだって繋がったんだから、あなたと僕の未来だって繋がらない筈はない。そうでしょう?」

ふわり。
いつか彼女が向けてくれたような笑顔を浮かべ、ホープは止めていた足を再び進めた。

いつかの日のために。









TO HOPE









13-2設定でホプヴァニ。ホプヴァニー!大好きだー!!何故マイナーなのかわからない><・・・!
ホープが「ヴァニラさん」って言うだけでもえます。末期です。これでホプヴァニ再会したら死んでしまうなもえすぎて!いやでももえすぎたいんですがすくえに様!!
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