前述しました15禁は、エロ注意の意味ではありません。 多少それに関連した表現は出てきますが、それがメインではありません。 ネタバレになりますが、妊娠ネタです・・・すいません。 よろしければどうぞ。 スピラに、平和が訪れてから。 二度目のピンチを乗り越え、ユウナんがあいつと幸せになってから。 二年のすれ違いを乗り越えて、パインが仲間たちと和解してから。 あたしは、ギップルと会わずに半年が過ぎてしまった。 ・・・と、この前ビサイドに遊びに行ったときにユウナんに言ったら、物凄くびっくりされた。 「えっなんで!?寂しくないの!?」 「いや、でも、あたしはあたしで忙しいし、あいつもあいつで」 「そりゃ、私の場合だって、それは言えるけど。でもね、会いたいときってあるでしょ?無性に会いたくなっちゃうとき!そういうのリュックは、我慢できちゃうの?」 「え、何、それはユウナんとティーダの話でしょ、あたしらは」 「あれ、付き合ってるんじゃなかったっけ?」 「ハシミッセンオーーー!!!」 軽くからかわれ、意外と寂しがり屋という新たなユウナんの一面を知り。 そしてあたしは、改めてあいつへの気持ちと、あいつとの関係を考えた。 (会いに、行くか?) 一念発起、というやつだ。 いつもならいらないと熨斗をつけて返す休暇を取り、ジョゼに飛空挺で送ってもらった。 あちらとしてもきっと、やっかい払いできたとでも思っているに違いない。 マスターから、あいつらが合コンをセッティングしているらしいということを聞いたからだ。 「・・・え、何、これ?」 この状況をアニキやダチに話したら、あるいは合コンを放り出してジョゼに戻ってきたかも知れない。 あたし自身、それを見て驚いたのと、それ以上にとんでもなく嬉しくなってしまったからだ。 「あら、リュック!」 「お嬢さん、グッドタイミングですね!」 ジョゼ寺院に一歩入った途端、鼻についたのはお酒の匂い、香ばしい肉の匂い、胸やけするような甘いチョコレートの匂い、などなど・・・。 そしてそれらをかき消すかのような、アルベド語のバカみたいな大歓声。 「おおお〜!?何これ、何これ!!何でこんなにたくさん人いるの〜!?」 もうもう盛大に興奮してしまって、まだ一滴もお酒なんて飲んでないのに、テンションは上がる一方だった。 あれだ、空気に酔ったというやつ。 見渡す限り人、人、人。 しかも全て金髪、よく見れば緑の渦巻き目。 これだけのアルベド人を見たのは、きっとホーム以来だった。 「俺が呼んだんだよ」 「え」 不意打ちで背後から聞こえたのは、今日の目的。 ばっと振り返ると、半年前と変わらないギップルが立っていた。 片手にはきつそうな匂いと色のお酒、垂れ目を更に据わらせ、空いている手の方で叩くようにあたしの頭を小突いてきた。 「よっ、シドの娘!」 本当に、変わっていないのが、嬉しい。 「・・・リュックだってば!」 はにかんだと感じた笑顔は、半年ぶりの彼の目にどう映ったのか。 その後は久しぶりに見る顔ぶれに端から話しかけ、昔話や近況報告などに花を咲かせた。 そしてこの謎の宴の真相も聞いた。 どうやら本人が言った通り、これはギップル主催のアルベド人限定の宴会らしい。 主旨は特にないらしいが、散り散りになったアルベド人に口づて人づて広告などで伝え、ホームはなくともかつて苦楽を共にした自分たちの絆を大切にしよう、などというスローガンを掲げてみたりしていたらしい。 そうでなくてもお祭り大好きなアルベドは、ノリノリで集まったようだ。 でもそこで疑問が一つ。 「カモメ団にはそんなお知らせ来なかったよ〜?仲間はずれ?」 2、3杯引っかけた辺りで、誰だかにそうやって言った。 そしたらカモメ団には当日サプライズで来てもらうから、伝えないでほしいというギップルの要請があったらしい。 (それにしたって、今日あたしがここに来たのだって偶然だし、アニキとダチなんて合コンなんですけどー!) 何だか腹が立ったから、ふらつく足を無理矢理立たせ、きょろきょろと辺りを見回した。 どこもかしこもバカ騒ぎ、つい今まであたしと話していた人も、いきなり立ち上がったあたしなんてもう知らん顔、違う人とバカみたいに笑い合っている。 ふと開け放たれた元試練の間の方に目を向けると、あのツンツン頭が歩いていくのが見えた気がした。 そういうときの酔っぱらいの行動力って、凄いのだ。 「はっけぇーん!」 お酒を持ったまま飛び跳ねるように走っていったから、ばちゃばちゃと周りにお酒が飛び跳ねた。 でも酔っぱらいのアルベド人はとんでもなく寛容らしく、「酒の雨だ〜お恵みだ〜」なんて言いながら、喜んでいた。 冷静な人間が誰一人としていない、そこがあたしたちのいいところであり、悪いところでもあると思うんだけど、アルベドのあたしからすれば、これは100%いいことなわけで。 最後にはコップごと放り投げ、目的の人物を追った。 「ギーップル!」 「!おお」 試練の間も奥の奥、そこで一人ぼけっと座っているギップルに、思い切りタックルしてやった。 その拍子にギップルが持っていたキッツイお酒が勢いよくあたしの頭にぶっかかり、思わずむせこんでしまった。 「うげ・・・くさっ!からっ!」 「臭いとか言うな!辛いのはホントだけど」 「よぉくこんなん飲めるねぇ」 「お前はよぉくあんな甘いの飲めんな」 「ん?何で知ってんの」 「最初の一杯は俺が渡してやったんだろが。忘れた?」 「知らなーい!」 「酔っぱらいが」 そうやって呆れるギップルだって、頬がいつもより赤らんでたし、最初に見たときよりも目がとろーんっていうかてろーんみたいになってたし、相当酔ってる。 そういえば、こうやって目の前でこいつの顔見たの久しぶりだ。 後ろからこの背中に乗りかかってる体勢のまま、まじまじとギップルを観察した。 アルベドの中でも少し色素の薄い金髪は、整髪料の匂いがぷんぷんする。 昔も多少整髪料を使っていた気がするけれど、このピンピンは再会したときちょっと可笑しくて、また似合いすぎてて面白かった。 長細くなった手足は、しっかりと筋肉がついてすらりときれい。 あたしがのしかかっているままでもびくともしないこの身体は、力仕事も何のそのなのだろう。 重いものを二人で協力して運んだこともあった。 でも今はきっと、あたしですらひょいと平気で運ばれてしまう気がする。 お酒の入ったコップを持つ手も、凄く節張っている。 アニキの手なんかよりすっと筋が通っていて、ダチよりは肉がそぎ落とされてる感じ。 でも何でも思いのままに掴めちゃいそうで、かっこいいな、なんて。 「何、さっきから」 べたべたと触ってこられるのが気になったのか(髪も腕も手も、全て触りながら考えてた)、空いている手でその手を捕まれ、ちらっとこちらを睨んできた。 睨んで見えたのは、鋭い眼光のせいかな。 それとも、こいつが酔ってるから? あたしも酔ってるから、わかんないけど。 「んん、男らしくなったなぁって」 「・・・」 この緑の螺旋は、何故だかくせになる。 アルベドなら誰でも持っているこの螺旋、酷く見慣れているものなのに。 この緑は、何だかやばいな。 久しぶりだから? それとも、魅力的だから? 「あたしさぁ」 だから、あんなことを口走ってしまったのかも知れない。 「あんたと再会できて、凄い嬉しいよ」 遠くの喧騒が、だんだん小さくなってく。 「・・・シドの娘」 聞こえるのは心臓の音。 お酒のせいで、こいつのせいで、どくどく煩い。 「リュックだって」 「・・・」 もう何秒、あたしたちは見つめ合ってる? 「リュック」 実際のところ、よく覚えていないというのが本当かも知れない。 酔っていたのも覚えてる、何だかそういう雰囲気になっていたのも覚えてる。 けど、そういうことをするのが結局本人の気持ちよりも雰囲気勝負なんだってこと、そのとき初めて知った。 だって、なかったことにできないようなことに、事実として幾つかの証拠が残ってしまっているからだ。 これがなかったらあたしだって未だに・・・信じられない。 一つ目は、その次の日の朝、全裸で隣で寝こけているあいつを、やっぱりあたしも全裸で発見してしまったから。 本当に、目ん玉飛び出るかと思った。 確かあれは、幻光河の近くに点在するうちの宿屋の一つ。 ジョゼから歩いて少しの場所、というのがまたなんだか気に食わなかった。 二つ目としては、自分では触ったこともないようなところから、ドロドロとした液体が流れ出ていたから。 一瞬これが何なのかわからなかった。 でも、ふと頭にセックス・妊娠という言葉が浮かんできて、すぐさまシャワールームに走った。 勢いよくシャワーを出して、その得体の知れない(嘘、本当は何となくわかってる)液体を指でかきだした。 いちいちピリリとした痛みと、僅かな得体の知れない気持ちよさが走って、泣きそうになった。 願わくばこれがあたしので、あいつのではありませんように。 その後のことはわからない。 急いで服を着て、走って逃げてしまったから。 あいつはきっとどこぞの名前も知らないような女といたしてしまったとでも思っているだろう。 その方がいい、あたしには一切記憶がないのに、あいつだけ覚えていてもなんだか気持ち悪いものがあるし。 気持ちが伴っていなかったのだとしたら・・・覚えてくれていない方が、有難い。 酔ってたから、大丈夫。 あいつは何も覚えてない、あたしも実は覚えてない。 それで、終わりにしよう。 でも、その数ヵ月後に、三つ目の証拠が出てきた。 三ヶ月、生理がこなかった。 ただの生理不順だと思っていたけれど、あまりにも来なくて怪しくなってきて。 ついにこっそりと薬局に行って、検査品を買ってきた。 少し迷ったけど、セルシウス内のトイレで、軽い気持ちでやってみた。 陽性だった。 頭が真っ白に、なった。 ギップル、あんたこれ、どう思う? ほむら、ひとつ 1 始まりは、あたしが欲しいと思っていた小さな命は、・・・素直に、喜べない形で現れた。 Continue. 色々すいません。ギプリュ大好きなのですが、愛がこんな形であわわわわ。 くらぁいおもぉい展開を予感させる感じですが、しばらくそんな感じだと思います。でもハッピーエンド大好き人間なので! 20080827 |