あんたでいいのかなって、ちょっとだけ、ほんのちょーーーっとだけ、思うけどさ。
でも、あたしの本能がいいって言ってるんだよね。
いいっていうか、あんたじゃなきゃやだって。









ほむら、ひとつ











「思い出した?」
「うーーーん・・・」
「頼むよ、お前が頼みの綱なんだから!」
「マキナ派の人間のセリフとは思えないね、それ」


これこれ・と促されたマキナを二人がかりでいじりながら、そんなアホみたいな会話をしつつ。
ガチャガチャ・聞き慣れた機械音をBGMにしながら。
むわ〜んって鼻につく油の匂いに麻痺してきた感覚を弄びながら。

ギップルのことを、ずーっと考えてる。

・・・考えてるったって、前みたいに気持ちズドーンって感じでじゃないけどね。
何ていうか、今更なんだけど、恋する乙女って感じで。
あは、何か自分で笑える。
ちょっと可愛くない?こんなリュックちゃんってば。


「それにしたってあんたがマキナ派のリーダーだってとこから、びっくりだもん」
「何だとぉ?俺様の活躍を知らないようだな」
「あー、二日間飲まず食わずで発掘作業に熱中しすぎて、死にかけたとか?」
「そうそう、ちょっと深追いしすぎて気づいたら乗ってきたホバーも行方知れず、監視マキナに見つけてもらうまで仕方ないから掘りに掘りまくってた・・・って、違う!つか何でそれ知ってんだ!」
「この前あんたがいなかったときに聞いた〜♪」
「ちくしょー、普通に恥ずかしい・・・」


手元から目を離してギップルを見たら、言葉通りほっぺがちょっと赤くなってた。
うちの男共見てるとそう思わないけど、男ってほんと、プライドの生き物だよねぇ。
この手の話なんてあたしはよくあることだし、あたしだったら笑い話にしちゃうんだけど。


「うそうそ」
「は?」


だから気まぐれで、フォローしてみたり。
気まぐれ?
うーん・・・、ちょっとだけ、狙ってたり。


「あんたあってのマキナ派じゃん。あんただからこそのマキナ派。あんたがいなくても勝手にできたグループかもしんないけど、今のこの感じは絶対なかったよね」
「・・・」
「あたし聞いたんだよ、いろいろ。ヴェグナガンのときだってあんたの言葉でみんな動いてたし、あんたのことみんな、心の中で支えにしてたよ」
「・・・まあ、アルベドだからってのもあるけどな」
「まーね!でもその中であんたってばやっぱり、凄いんだよ。アルベドの中でもアルベドらしいのかな?・・・もっと昔だって、周りを引っ張ってたし」


シンがいたときだって。
永遠のナギ節が来たときだって。
今だって。

人を自然と引きつけて、引っ張ってくギップルはいつだって凄かった。
いつだってかっこよかった。

男だって女だって、だからみんなあんたに惹かれちゃうんだよ。
あんたについてったり、あんたをライバル視したり、あんたに惚れちゃったり、するんだよ。


「何だぁ、大層褒めてくれたなぁ」
「ふふん、たまにはね」
「じゃあ、ついでに」
「?」


何だか改まった言い方だったから、気になって顔上げちゃった。
ら、ギップルまでこっち見てたから、困った。
あっちは何かにやにやしてたから、絶対照れないように顔に力入れた。

あれ、これって逆効果かな?
でももう、そういうこと考えて対策するだけの余裕がなくなってた。
おかしいなあ、目が合うくらい、別に普通のことなのに。
目と目を見て話すことなんて、当たり前のことなのに。

すっごい、ドキドキしてきた。
おっとやばい、工具落としそうになった。


「今の俺があるのは、ある意味お前のおかげ」
「へっ?」
「嘘っぽい?」
「信じらんない」
「はっはっは!正直だな!」


だっていきなりそんなこと言い出したら、びっくりするよ!
そりゃ、流れ的にあたしのこと褒めるようなこと言うんだろうなあとはわかってたさ。
ちゃんと心の準備だって、短時間でそれなりにしたさ。
でもさぁ、言うに事欠いて。


「何それ!」


だよ!


「・・・意外?」


いつのまにかあぐらをかいて、ぽりぽりと頭の後ろの方をかきながら、苦笑いしてる。
あれ、これ、照れてたり言いづらいこと言ったりするときのこいつの癖だ。
じゃあ、本当なんだ・・・?


「・・・びっくりした」
「まー、こんなん言う機会なんてないしな、普通」
「じゃー言わなきゃいいじゃん」
「お前が言うかそれを!そっちが急に俺のこと褒めだしたから、いっちょ決心して言ったのに!」
「はは、あー、まあ、何か、えーと、あは、・・・照れるね、やっぱ」
「そうそう、照れとけ」


何でかふんぞり返ったギップルに苦笑しつつ、もうちょっと深く突っ込んで聞きたいかも、って思った。
だって好きな人が、あたしのおかげとか言ってるんだよ。
しかも簡単なことじゃないよ、結構あたしこいつの中で、いいポジションっぽいよ。
あー、つい恥ずかしくなっちゃって話切っちゃったけど、ちゃんと最後まで聞けばよかった!


「討伐隊のときとか」
「!」


どうやってもう一回この話に戻ろう・なんてことに頭を集中させようとした途端、口火を切った。
しかも話が戻ったっぽいから、今度こそあたしは余計な口を挟まないで、聞く体勢に入った。

これどう考えても、貴重な話でしょ。


「入るってことには全く迷いはなかったんだけど、気合い入れてくれたんだよ、お前」
「えっ、あたしが!?」
「覚えてねぇだろうな」
「・・・うん」


うっそぉ、あたし、そんなことしたっけ?
気合い入れた・・・?
こいつもしかして、違う女と勘違いしてるんじゃないの?

・・・あ、やばい、自分の言葉に自分でダメージ受けた。
だって確かにそう。
こいつがホーム離れる頃、付き合ってる子いたし。
それにあの夜、こいつがホームを離れるときにばったり会った夜、そのことを聞いたあたしは、確か。


「大泣きしたんだよな」
「・・・だよね」


そう、泣いた。
超泣いた。
次の日の朝目が真っ赤になってて、ケヤックに凄い心配されたくらい、泣いた。


「あれが利いたんだよ」
「え」
「確かに困ったけど。ばかな妹分が泣いちまった、族長に叱られるってさ」
「・・・」
「でもお前がむせりながら泣いてんの見て、守りたいって思った」
「守りたい・・・?」
「うん。お前や仲間たちが笑うこのホームとか、その外で暮らすスピラの人間とか、全部・・・シンから」


そこまで聞いて、やっぱり我慢性のないあたしはつい口を挟んじゃった。
だってそれは、少し誤解してたとこだったから。


「オヤジのこと、キライだからかと思ってた」
「はあ?俺が?」
「オヤジのことキライだから、召喚士守ろうとしてるあの頃のアルベドのやり方が嫌で、行っちゃったんだと・・・」
「キライってのはないって!まあ、苦手っちゃ苦手だけど。ただ俺の考え方が違かっただけ。間接的な方法が肌に合わなかったっていうか・・・もっと直接的に、スピラを守りたかった。そういう実感持ってたかったっていうか」
「・・・」


ギップルらしい物言いに、ただ聞いてるしかできなかった。
その中で、頭の中に残るフレーズ。

守りたい、だって。

わかるよ、そりゃあわかってるよ?
ただの言葉の文。
こいつが守りたかったのはスピラ。
でも、その気持ちが強くなるきっかけになったってのは・・・、単純に嬉しいっていうか・・・、ちょっと、恥ずかしいっていうか。


「結局ユウナ様に救われちゃったわけだけどさ」


じゃあこいつは、討伐隊時代・・・てか、アカギ隊候補生時代、少しはあたしのこと考えててくれてたのかな。


「アカギ隊もなくなっちまったし、何もできなかったわけだけど」


泣いた顔だけじゃ何か複雑だけど、さ、楽しかった頃の記憶として。


「でも、自分の志のために、精一杯やれたのは実感できてる」


守るものとして。


「お前に言うのも違うとは思うけど・・・ありがとな」
「・・・!」
「何か、そういう気分」


へへ。
はにかんでる顔が、さっきまでの言葉全部本音だって言ってた。

そんな、あたし、あたしは、何て言葉返せばいいの。


「っ、あたし、は」
「ん?」
「あの頃、旅の間は、ユウナんのことしか考えてなかったけど」
「まあそーだろ」
「でも!・・・あんたが、生きてるってわかったとき、すっごい、嬉しかった」


おかしい、あたしたち。
っていうか、あたし。

違うこと言うためにここに来たのに。
気づけば何でこんなこと、言ってるの。
何でこんな、告白みたいなこと、してるの。

もう視線なんて合わせてらんない、無理。
顔やばい、熱い!
そういう態度全部隠そうと思ってまた作業に戻ろうとしたけど、できなかった。

手が微妙に震えちゃって細かい作業できる状態じゃなかった。
いつのまにかギップルが近づいてきて、肩掴まれた。


「正直ずっとそういう感情だったわけじゃ、ないけど」
「・・・」
「でもお前は昔から、ずっと特別な女だった」


そっとあたしの頬を包んだ手がもしもグローブじゃなかったら、リアルにこの熱を伝えてしまっていた。
もう少しの冷静さがもしもまだあたしに残ってたら、びっくりするくらい赤くなった肌に気が付いて、もっと赤くなっちゃってた。

頬から鼻へ、鼻から唇へ。
伝う指に意識が全部持っていかれちゃって、全然動けなくなった。


「だからあのとき、キスしたんだ」
「−−−」


あたしたち以外誰もいない空間。
最初からあんまり音なんてしてなかったけど、その瞬間だけは、空気の動く音すらかき消えた気がした。









Continue.














やっとここまで書いたー・・・けど、ホントはもっと内容的にいく筈だったんです!ギプリュが何か昔話始めちゃったから・・・(責任転嫁)あの昔話部分はちゃんと別エピソードとして考えてあったんですが、こんな形で挿入してみました。あとでちゃんと書く・・・かも?
話は戻って、やっとギップルが口を割ってくれました・・・!覚えてんだぜ、あいつ!ってのを、書けた!
ちょっとずっとギップルヤ○逃げという汚名があったので、まあまだあるんですけど(・・・)、あいつだって良心あるんだぜ!人の子なんだぜ!・・・ってのを、9で書きたいと思います。ます!
もう少しなので、お付き合いいただけると嬉しいです・・・!・・・のびのび書いてしまって大変申し訳ないです・・・;;
(090929)
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